はじめに
組み込みSSL/TLSライブラリwolfSSLはこの度、Open Watcom C/C++コンパイラのサポートを追加しました。この拡張により、開発者はWindows、Linux、OS/2を含む複数のプラットフォーム間でOpen Watcomを使用してwolfSSLをビルドできるようになります。この投稿では、新しいOpen Watcomサポート、その機能、およびプロジェクトで活用する方法について探ります。
Open Watcomとは
Open Watcomは、商用Watcom C/C++コンパイラから派生したオープンソースコンパイラスイートです。特に以下の点で評価されてきました。
- クロスプラットフォーム機能(Windows、OS/2、DOS、Linux)
- 効率的なコード生成
- レガシーシステムの強力なサポート
- オープンソースコミュニティによる継続的な開発
このコンパイラは、OS/2のようなレガシーシステム向けのソフトウェアを開発・保守する際によく使われています。
Open Watcom向けwolfSSLの新機能
PR #8505 / #8484により、wolfSSLがOpen Watcomとシームレスに動作できるように実装しました。
1. マルチプラットフォームサポート
- Windowsビルド
- Linuxビルド
- OS/2ビルド(OS/2サポートは現代のライブラリでは稀であり、特に重要なポイントです。)
2. ビルド構成オプション
- シングルスレッドおよびマルチスレッドビルド
- 静的ライブラリおよびDLL(動的リンクライブラリ)オプション
- Open Watcom 1.9以降のバージョン(2.0+)との互換性
3. OS/2固有の拡張
- OS/2ネットワーキング用のソケット処理
- OS/2固有のスレッドモデル向けスレッド管理
- OS/2の適切なミューテックス実装
4. 技術的な改善
- OS/2ヘッダーとの競合を避けるため、OFFSETOFマクロをWC_OFFSETOFに変更
- Open Watcom用の適切な時間処理関数を追加
- プラットフォーム固有のコード用の条件付きコンパイルを実装
- クロスプラットフォーム互換性のためのソケットおよびI/O処理を修正
使用例とメリット
Open Watcomサポートの追加により、次のようなメリットがもたらされます。
- レガシーシステム統合
OS/2や古いWindowsバージョンで動作するレガシーシステムに、現代のTLSセキュリティを統合する。 - クロスプラットフォーム開発
単一のコンパイラを使用して複数のプラットフォーム向けにコンパイルできる、セキュアなアプリケーションを開発する。 - 教育環境
教育にOpen Watcomを使用する大学などの教育機関が、セキュリティカリキュラムにwolfSSLを組み込めるようになる。 - 組み込みシステム
特定の要件を持つ組み込みシステムにおいて、Open Watcomの効率的なコード生成により恩恵を受けられます。
まとめ
この度のOpen Watcomサポートの追加により、レガシーシステム、教育環境、特定の組み込みプラットフォームで作業する開発者が、wolfSSLの堅牢なセキュリティ機能を活用できるようになります。
異なるスレッドモデルとライブラリタイプの包括的なサポートを実装しており、開発者がwolfSSLをプロジェクトに統合する方法の柔軟性を向上しました。
情報システムを取り巻く環境が日々進化を続ける中、システム固有の要件を満たさなければならない状況下においても、wolfSSLのTLS実装を通じて現代のセキュリティ標準を維持できることを目指しています。
ご質問がございましたら、ぜひ info@wolfssl.jp までお問い合わせください。
原文:https://www.wolfssl.com/wolfssl-adds-support-for-open-watcom-compiler